刀伊の入寇 wikipedia|無料辞書
刀伊の来寇ともいう。侵攻の主体とされる女真族とは、
12世紀に
金を、後の17世紀には
満州族として
清を建国する
民族である。だが、当時の女真族の一部は高麗へ
朝貢しており、女真族が遠く日本近海で海賊行為を行うことほとんど前例が無く、捕虜に高麗人もいたことから、権大納言
源俊賢は賊が高麗人主体か又は高麗属民の女真族主体の集団ではと疑問を呈している。高麗は拉致された壱岐・対馬の島民を日本へ移送しており、高麗政府として関与していた可能性は薄いと考えられている。
◆ 経緯
刀伊とは、
高麗が北方(東界・北界)の蛮族を指す時に使う名称であった。15世紀の
訓民正音発布以降の、
ハングルによって書かれた書物では
?(そのまま「トイ」)として表れるが、当時とは国境が違うことを理解しておきたい。
寛仁3年(1019年)
3月27日、刀伊は賊船約50隻(約3000人)の船団を組んで突如として対馬に来襲し、島の各地で殺人や放火を繰り返し暴れまわった。この時、国司の対馬守遠晴は、なんとか島からの脱出に成功し
大宰府に逃れている。賊徒は続いて、壱岐を襲撃。老人・子供を殺し、壮年の男女を船にさらい、人家を焼いて牛馬家畜を食い荒らした。賊徒来襲の急報を聞いた、国司の壱岐守
藤原理忠は、ただちに147人の兵を率いて賊徒の征伐に向うが、3000人という大集団にはとても適わず、奮戦するも空しく玉砕してしまう。理忠の軍を打ち破った賊徒は次に壱岐
嶋分寺を焼こうとした。これに対し、嶋分寺側は、常覚(島内の寺の総括責任者)の指揮の元、僧侶や地元住民たちが激しく抵抗、応戦した。そして、襲い掛かる賊徒を三度まで撃退するが、その後も続いた賊徒の猛攻に耐えきれず、常覚は一人で島を脱出し、事の次第を大宰府に報告へと向った。しばらくして、寺に残った僧侶たちは全滅してしまい嶋分寺は陥落した。この時、嶋分寺は全焼している。その後、
筑前国怡土の郡に襲来、4月8日から12日にかけて現在の
博多周辺まで侵入し、周辺地域を荒らしまわった。これに対し、
大宰権帥藤原隆家は
九州の
豪族や
武士を率いて撃退した。たまたま風波が厳しく、博多近辺で留まったために用意を整えた日本軍の狙い撃ちにあい、逃亡したと記されている。
被害は、記録されただけでも殺害された者365名、拉致された者1,289名、牛馬380匹、家屋45棟以上。女子供の被害が目立ち、壱岐島では残りとどまった住民が35名に過ぎなかったという。また有名な対馬銀鉱も焼損した。
当初、
日本側は何者が攻めてきたのか分からず、賊虜3人がみな高麗人であって、彼らは「高麗を襲った刀伊に捕らえられていたのだ」と申し立てたが、以前に新羅の海賊が九州を襲ったこともあってか、太宰府や朝廷は半信半疑であった。結局、賊が高麗人でないと判明したのは、7月7日、高麗に密航していた対馬判官代
長嶺諸近(ながみねのもろちか)が帰国して事情を報じ、9月に高麗虜人送使の
鄭子良が保護した日本人270人を送り届けてきてからである。高麗使は翌年2月、太宰府から高麗政府の下部機関である安東護府に宛てた返書を持ち、帰国した。隆家はこの使者の労をねぎらい、黄金300両を贈ったという。
「刀伊」の主流は恐らく満洲民族の前身である
女真族であったと考えられている。当時の女真は農耕の習慣を持っておらず、代わりに
農耕民族を拉致して自己の勢力圏内で農耕に従事させて食糧を確保していたとも言われている。このため、入寇の目的としては単なる
海賊行為の他にこうした農耕民族住民の確保があったとも言われている。
この非常事態を
朝廷が知ったのは隆家らが刀伊を撃退し、事態が落着したあとであったが、
防人や
弩を復活して大規模に警護を固めた
弘仁、
貞観、
寛平の韓寇のときにくらべ、ほとんど再発防止に努めた様子はうかがえない。その上、撃退した
藤原隆家らに何ら恩賞を与えなかった。これは「
平将門の乱(
天慶の乱)」、「
藤原純友の乱(
承平の乱)」に続き朝廷の無能振りと
武士の影響力の増長を示すこととなった(追討の勅符の到着前に撃退していたため、勅符の重要性を強調して
藤原行成・
藤原公任が恩賞不要の意見を述べたが、
藤原実資が反論して恩賞を与えるべきとの結論に達したとされている。また、後に引退していた
藤原道長の口添えによって恩賞が出されたともされている)。
隆家らに撃退された刀伊の賊船一団は高麗沿岸にて同様の行為を行ったが、ここでも高麗の
水軍に撃退された。このとき、拉致された日本人二百数十人が高麗水軍に保護され、日本に送還された。また日本は
宋との関係が良好になっていたため、外国の脅威をあまり感じなくなっていたようである。日本と
契丹(
遼)はのちのちまでほとんど交流がなく、密航者はきびしく罰せられた。
◆ 付言
賊の風俗は、「牛馬を切っては食い、また
犬を屠殺してむさぼり食らう」と記録され、また「
人を食う」との証言も見られる。斬り込み隊、盾を持った弓部隊らが10-20組も繰り出してあっというまに拉致・虐殺・放火・略奪をやってのけ、牛馬をぬすみ、切り殺して食うなどの蛮行をかさねてはつぎの場所へと逃げてゆく、という熟練ぶりであった。逃げるのにじゃまになった病人や児童は簀巻きにして平然と海に投げ入れた(詳細は参考文献を参照)。
・刀伊の入寇 page1
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