極度に希薄な音楽的密度を保つ傾向は、デビュー時から変わっていない。二本の
ヴァイオリンと
ピアノと
トロンボーンの為の「夏風の中に(1997)」では
トロンボーンが終始
プラクティス・ミュートを付けられている為、本来の合奏で得られる共鳴とは逆転現象が起きる。「チューダーの薔薇(1998)」では不意なアップボウイングの連続、「
アリア フェリックス・ゴンザレス=トレースのために(2001)」では元々持っていた資質に持続性が加わっている。
ほとんどPPPPPと沈黙の使用であるにもかかわらず、妙に親しみやすい音選択を故意に用いる瞬間が聴き手をくすぐる。硬直した現代音楽の凝りや伝統の垢が感じられない、「人間が知覚する、本来の聴き易さ」を求める態度に変わりはない。