臨死体験 wikipedia|無料辞書
臨死体験(りんしたいけん)とは、
人間が事故や病気などが原因で一度
死亡したと医師に診断された後、回復した際に体験したと証言したものである。
後に臨死体験のことを、死亡する際に人間が体験するものであると理解されることが多くなった。
◆名称
名称はNDE(Near Death Experience、ニアデス体験)、直訳語は「近似死体験」だが、
NHKが「臨死体験」という番組を放送したのと
立花隆の著作『臨死体験』でこの名前が有名となった。なお、臨死とは『萬葉集』(
万葉集)の挽歌で人が亡くなる直前の意味を表し、「臨死(みまか)らむとせし」と訓ずる。医療現場では末期ガン患者など、終末期で治療不能患者を臨死患者と表現することがある。ところが、ニアデス体験は本来死亡と診断されたが生き返った人の証言のことであるため、厳密に用語を使用しようとする者はその意味のニュアンスを反映させた訳語である「ニアデス体験」を使用している。なお、この記事では方便として以下臨死体験を使用する。
◆概要
体験者が意識を回復して蘇生した際の証言に基づき、<光>体験、光のトンネル、
三途の川や花畑、死者、
キリスト、
仏陀との対峙などの「死後の世界」と思われるようなものを見たり、一生の記憶のリピート現象(
走馬灯)、
体外離脱と呼ばれる体験をしたなどの一定のパターンが存在する。また落雷を受けての大火傷など、通常では助からないような重体からの生還も報告されている
臨死体験を記述していると思われる歴史的な文献については、「チベットの死者の書」「エジプトの死者の書」、プラトンによる「国家論」、ベーダ「英国の教会と人々の歴史」などが挙げられる。
ハーバードで宗教学の講義を務めるキャロル・ザレスキーは、中世の文献は臨死体験の記述であふれていると指摘している
◆解釈
臨死体験の解釈を巡り、
幻覚などの脳内現象であるとする説、現実体験であるとする説などがある。
物理学者のマイケル・タルボットや臨死体験の研究者であるレイモンド・ムーディは、そもそも現実とは1つの固定的なものではなく、集合的でホログラフィックな性質ものであるというホログラム説から臨死体験の説明を試みている。
また心霊主義(spritualism)では霊魂が肉体とは別に実在するという心身二元論の立場に立っており、肉体から霊魂が分離する幽体離脱により臨死体験が起こるとされている。
スピリチュアリズムによる解釈の1つとして「アストラル・トリップ説」がある。ヒューストン・スミスやエドワード・コンツェなどの研究者は、宗教・神秘学における伝統的な知見の多くには、「微細界(中間界・アストラル界)」の記述があると主張している。この領域は地上界と天上界(イデア・神界など)の間にある領域で、人間が創造する物質やイマジナルなものがすべて含まれるという。この領域は肉体の死去と同時に活性化する微細身体で体験するものであるとされる。このアストラル説は、臨死体験の中に空想的で現実と合致しないものもあれば、現実的なものもあり、天国的な体験もあれば地獄的な体験もあるという多様性があることから推測されたものと思われる
◆盲目の臨死体験者の例
エリザベス・キューブラーロスにより、生前は盲目であった患者が臨死体験中に視力を取り戻し、体験中に病室などで起きた出来事を詳しく描写したという例が報告された。ケネス・リング博士は目の不自由な臨死体験者約30人にインタビューをとった結果、回答者の80%が臨死体験中に「視る」ことができたことを認めた(なお、ケネス・リングは臨死体験の研究に科学的・統計的な方法を導入した人物である)。この結果は、臨死体験者が現実の状況を生前以上に正確に把握できる例として、臨死体験の「客観性」をある側面から裏付けるものとなった。
このような「知覚の拡大」は臨死体験においては珍しい現象ではなく、「体験者が昏睡状態にある手術室や、そこから離れた遠隔地の出来事を正確に描写できた」「自分の周りを背中なども含めて360度同時に眺める事が出来た」「自分の生前の身体のまわりに集まる人々の思考が読めた」「生前に手足を切断された者が体験中は四肢を取り戻していた」「遠隔地で自分とほぼ同時に死亡した友人と臨死体験中に遭遇した」などの現象も数多く報告されている。ロバート・サリヴァンの研究では、とある軍人が臨死体験後に「視覚の拡大」の能力を持ちかえり、第二次大戦中にその能力を用いて激しい銃撃戦から生還した例などが紹介されている。
◆光体験
臨死体験の主な特徴として「光」体験が挙げられる。多くの体験者の報告する所によれば、この光は人格を持っており、かつ「命そのものの光」であり、この光に遭遇すると、「自分のすべてを知りつくされ、理解され、受け入れられ、許され、完全に愛しぬかれる」体験が起きるとされる。この愛は恋人や家族から感じる愛情とは比較にならないほど広大なものである。また、人間や生物のそれぞれの命が、自然界の大きな秩序の中で役割を果たして調和している現象などがこの光の中で見られたという。
レイモンド・ムーディの研究によれば、臨死体験者のほとんどがこの光に遭遇したとされる。またケネス・リングやセイボムの研究によると、この光体験には性別・年齢・人種・居住地・職業・宗教などの個人的背景や、病気か事故死などの死因の違いによっても差が見られないという
しかし、日本人の臨死体験者でも「光体験」は多く報告されるが、それはあくまで自然的な光であり、アメリカの臨死体験者と比べて「愛」や「神」としてそれを認識する者は少数であるというデータもある。「光」体験自体には文化を超えた共通性があるが、その解釈については文化的な影響に左右されると推測することもできる。日本人の「光」体験者の代表的な人物としては、鈴木秀子氏などが挙げられる
◆人生回顧 (ライフレビュー) の体験
臨死体験者に一般的に起こるとされる現象である。ダニオン・ブリンクリーやベティー・イーディーなどの臨死体験者が特に詳しく報告をしている。
この体験は、日常では記憶の底に忘れ去られていた過去の出来事を再体験するというもので、その際には体験者である自分の視点だけではなく、かつての自分が影響を与えた他者の視点からも出来事を再体験するという。過去に自分が他人を傷つければ、傷つけられた他者の視点からその体験を味わう。喜びを与えればそれも再体験される。こうした体験により、蘇生後は他者への思いやりや自己への責任感が飛躍的に強まるという。また自分が間接的に他者に与えた影響もここで体験する、との報告もある。臨死体験者のダニオン・ブリンクリーは、自らが配送した武器を扱った兵士たちにより殺された戦争被害者の感情や、その被害者を失った家族の悲しみを味わったと著書で記述している
レイモンド・ムーディの研究例では、この回顧体験には光の存在が現れる場合と現われない場合とがあり、前者の方が体験が強烈になることが報告されている。また、他者の視点に立ち過去を振り返ることで、蘇生後はより調和的な人格に変わるという内容から、この体験の存在は、臨死体験が全て自分の脳内でのみ起こるという脳内現象説への1つの反証例となっている。
臨死による人生回顧体験を記述していると思われる歴史的な文献については、パタンジャリにおける2000年前のヨガ文献、「チベット死者の書」「エジプト死者の書」、プラトンによるエルの彼岸への世界の旅の話などが挙げられる
◆臨死体験と自殺
臨死体験者が自ら命を断つことはない、という研究結果が出ている。自殺未遂を繰り返してきたものでさえ、臨死体験を経験すると二度と命を断とうとしない事がケネス・リングの研究により報告されている。また既に自殺を終えてしまった者に対しての同情心は強まるようになる。
俗に自殺すると地獄に落ちると言われるが、ケネス・リングの統計によれば自殺による臨死体験は病気や事故による体験と事異なるものではない。(ただ体験の奥行きが浅いのと、5人に1人しか回答していないということである。)セイボム博士の統計によれば臨死体験の1パーセントは体験により地獄的な世界を見ている。また、ごく少数ながら自殺をして地獄を見たと本に書いている体験者も存在する
◆臨死体験の段階
#死の宣告が聞こえる
#:心臓の停止を医師が宣告したことが聞こえる。この段階では既に、病室を正確に描写できるなど意識が覚醒していることが多い
#心の安らぎと静けさ
#:言いようのない心の安堵感がする
#耳障りな音
#:ブーンというような音がする
#暗いトンネル
#:トンネルのような筒状の中を通る
#物理的肉体を離れる
#:体外離脱をする
#他者との出会い
#:死んだ親族やその他の人物に出会う
#光の生命
#:光の生命に出会う。神や自然光など、この光についての解釈は文化により異なるという説がある
#省察
#:自分の過去の人生が走馬灯のように見える
#境界あるいは限界
#:死後の世界との境目を見る
#蘇生
#:生き返る
◆臨死体験者に起こる変化
立花隆やケネス・リングの研究によると、臨死体験者は既成の特定宗教の立場を離れ、より普遍的な宗教心の探究へと向かう傾向にある。サザーランドの研究によれば臨死体験者は臨死体験をスピリチュアル(霊的)なものとして認識し、宗教的な体験だと感じるものはゼロであったという。
臨死体験者の多くは、体験後の自分の肉体的・心理的な変化を明らかに自覚している。アメリカのケネス・リングの研究によれば、臨死体験者の50%が体験後に「生体エネルギー」が増加したことを報告している。
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